6月1日に2018年春卒業予定者採用の選考活動が解禁しました。実際には、既に「面談」という名の選考がおこなわれていて、ここ数日で最終面接、中にはもう内定が出まくっているとか。
「超氷河期」といわれた私の頃とは違い、今の就活は「温暖化」の売り手市場です。

で、それでは車イスユザーの就労はどうでしょう?とはじめた「車イスユザーの就労について考える」の3回目です。
「概論の後編」です。
前回まで、今後の動向として、「車イスユーザーの雇用においても売り手市場になる」と記載しました。その理由の一つは「法定雇用率の引き上げ」で、来春の新法定雇用率を予想したわけですが・・・


■新法定雇用率が決まりました!
なかなか発表されないなーと思っていたら、5月30日、第73回労働政策審議会障害者雇用分科会が開かれ決定しました。報道でご覧になった方も多いかと思います。
今回の決定ですが、私には少し意外なものでしたが、まずは内容をみていきましょう。

①来春(2018年4月1日)からの民間企業の法定雇用率は2.2%
②2020年3月31日までには民間企業の法定雇用率は2.3%にする
③2023年4月1日からは民間企業の法定雇用率は2.4%

の3点ですが、まず①の2.2%という数字です。正直なところ2.3%かなと思っていました。まあ、これが②と絡んでくるわけですが。
②の、「2020年3月31日までには」というのには驚きました。まさかさらにキザムとは・・・それだけ0.1%の違いが企業に与える影響が大きいということを表しているとも言えます。
そして、③です。
まさか最終的な着地が2.4%とは・・・2.7や3.0なんて試算もあったのでこの低さには驚きです。
2.4%となった計算は以下のとおりだそうです。
新法定雇用率
第72回障害者雇用分科会配布資料より


■実際の車イスユザーの雇用は?
予想していたよりは低めの数字でしたが、過去最大の引き上げであることには変わりありません。
ただし、この引き上げに企業側がついてこれるかという問題もあります。
達成企業情報JPG
第72回障害者雇用分科会配布資料より
左上のグラフは実雇用率の推移、右上は2.0%以上の雇用をしている企業の割合の推移を企業規模別に示したものです。
現在の2.0%という目標ですら、実際には1.92%で、達成できている企業は48.8%です。
つまり、法定雇用率が引き上げられても、その数値通りになるわけではないわけです(当たり前ですが)

ただ、前回述べたように、車イスユーザーの雇用が進んできた背景は法定雇用率制度だけではありません。
技術の革進や社会意識の変化は追い風であることは間違いありません。

2023年までに新たに10万人以上の新たな障害者の雇用がみこまれ、その多くは精神障害の方や知的障害の方が占めると予想されていますが、車イスユーザーの雇用も伸びることは間違いないでしょう。
これほど障害者の雇用が増加するのは過去に例がなく、超売り手市場となるわけです。


■新たな車イスユザーの雇用の形
さて、法定雇用率の遵守やCSRとして障害者を雇用するだけでなく、障害者の雇用に新たな価値を見出す企業も出てきました。
それが「障害者のアスリート雇用」です。
2020年の東京大会を控えて、パラスポーツに注目が集まっている今、障害者スポーツに取り組む選手を積極的に雇用しようとする企業が急増しています。
(JOCが取り組む「アスナビ」の他、民間でも障害者アスリートと企業を結ぶ人材紹介企業も数多くでてきました。)
企業は雇用した選手が活躍してくれることで、広告宣伝になりますし、イメージアップにもなります。応援が社員の団結を強くするといった効果を期待するところもあります。
待遇・勤務形態は様々ですが、多くはほとんど実業務に従事する必要がなく、練習に集中でき、遠征費なども支給されるケースもあります。出社も週1回から中には月1回というケースも。
パラリンピックや国際大会に出場するレベルのアスリートに限られますが、新たな雇用の形と言えるでしょう。

このアスリート雇用の特徴は車イスユーザーが多いということです。(アスナビ経由だと車イスは少ないですが・・・)
企業としては広告塔ですので、車イスアスリートの「一目見てパラ選手とわかる」は大事なポイントです。
車イス競技の車イス選手はアスリート雇用の目的とマッチしやすいというわけです。



■課題と大切なこと
さて、ここまで、「雇用数が急増する」「売り手市場」「新しい価値」などと記載しましたが、課題がないわけではありません。
先ほどの上のグラフでわかるように、障害者雇用を引っ張っているのは、従業員数1000人以上の大企業で中小企業では進んでいません。これはつまり「大企業がある都市部では障害者雇用が進んでいるが、地方ではそうではない」ということを物語っています。
また、障害者の雇用形態の多くが正社員ではなく契約社員であることや賃金格差がある場合もあります。
アスリート雇用の場合も、選手引退後の待遇に問題がでるケースも考えられます(引退後の雇用を約束している企業もたくさんありますが)
インクルーシブの理念が掲げられる一方で、特例子会社数は増加し続けています。

既に働いている車イスユーザーもこれから働こうと考えている車イスユーザーも、これらの課題を認識しつつ「エンプロイアビリティ(雇われる力)」を高める事が大切です。(耳が痛い!)
また障害者の雇用を検討する企業側も、法定雇用率や2020の気運に流されない、障害者一人ひとりに向き合った雇用計画が重要だと思います。
「就職」「採用」はゴールではなく、長〜い道のりのスタートです。



今回は概論でしたのでいつか「各論」をやりたいのですが、この手の記事は人気ないんですよね・・・PV数が全然伸びない(笑)
次回は、久しぶりパーツネタにしようかな。。